
選考設計で採用を成功に導く、評価と体験のデザイン術
適切な選考設計にはいくつかの必須要件があります。まず、ターゲットが明確でない場合、選考設計自体が成り立ちません。さらに、面接が単なるスタンス評価や意向確認に終わってしまうと、重要な自社での活躍可能性を見極めることができま […]
内定を出す際に、いつ、どのように伝えるのが最も効果的かを十分に考慮した上で実施できていますか? 内定辞退を防ぐためには、候補者をしっかりとGRIPし、適切な形で内定を出すことが不可欠です。また、特に重要なのが「内定を出すタイミング」です。
そこで今回は、現在の採用市場を踏まえた適切な内定出しのタイミングとその理由についてご紹介いたします。
近年、新卒採用市場の早期化が進み、その傾向はますます顕著になっています。実際、25卒と26卒を比較すると、採用活動は約2ヶ月前倒しで進んでおり、この動きは企業の取り組みだけでなく、採用メディアからも報告されています。
特に、優秀層の獲得を目指す企業の場合、大学2年生の春休みに合わせて求人をオープンするケースも増えており、今後さらに前倒しされる可能性もあります。実際、優秀層をターゲットとする就活メディアの中には、大学2年生の12月から求人をオープンし、春休みにスプリングインターンを実施するケースも見られます。このように、採用活動の早期化は確実に進んでいるのです。
従来、大手企業を中心に、大学4年生の6月に内定を出すというスケジュールが一般的でした。しかし近年では、大学2年生から就職活動を始め、大学3年生のうちに内定を獲得する流れが主流です。
この背景には、学生が内定承諾に法的拘束力がないことを理解していることが挙げられます。そのため、近年の採用市場では、早期選考を受けて一旦内定を承諾しながらも、大手企業の選考に引き続き参加する学生が増えているのが現状です。
このような状況の中、早期から新卒採用に取り組み、大学2年生・3年生と接点を持つ企業にとっては、内定を出すタイミングの判断がこれまで以上に難しくなっています。
適切なタイミングで内定を出し、優秀な人材を獲得するためには、次の2つのポイントを意識することが重要です。
採用市場が激化する中で、企業は「逃げ切り(先行して早期内定を出し、競争を避ける)」 か「差し切り(競争の中で最終的に選ばれる)」 のどちらの戦略を取るのかを慎重に見極める必要があります。
しかし、単に「自社は逃げ切り型だから先行して内定を出す」という単純な発想ではなく、競合の動向を踏まえた上で、状況に応じて最適な戦略を選択することが重要です。 具体的には、以下の3つの戦略が考えられます。
①「逃げ切り」戦略: 早期に内定を出し、他社をリードする
②「差し切り」戦略: 他社の動きを見極めながら、最終的に選ばれるポジションを狙う
③「ゲリラ戦」戦略: 集団の中で柔軟に立ち回り、機動的に動く
例えば、学生が「第一志望です」「内定を承諾します」と言ったとしても、それが本心であるとは限りません。そのため、「内定承諾=採用成功」ではなく、その後のフォローが不可欠となります。
もし「逃げ切り」戦略を取る場合、内定承諾後に他社の選考を辞退させることが重要です。同時に、新たな競合が出てきた場合に備え、内定者との関係を深めながら状況を把握し、適切な対応を取る必要があります。
ここでのポイントは、「まず競争相手を減らすこと」 です。競争相手が多すぎる状態では、逃げ切ることも、差し切ることも難しくなります。したがって、一旦競争を減らした上で、仮に新たな競争が生じた場合には迅速に把握し、内定承諾後のフォローを強化することが求められます。
逃げ切るか差し切るかといったアクションを決定するには、状況を正しく読み取ることが重要です。そのためのポイントは基本的に2つあり、エージェントを利用している場合は3つの方法があります。
①本人の発言を正確に把握する
例えば、「御社が第一志望です」と言っているのか、「第一志望群の一つです」と言っているのかによって、意向の強さは異なります。このニュアンスをしっかり理解することが重要です。
②競合企業の選考フェーズと選考の進め方を把握する
他社の選考がどの段階まで進んでいるのか、どのような選考プロセスを取っているのかを理解することで、戦略を立てやすくなります。
③エージェントの情報を確認する(※エージェントを利用している場合)
エージェントから得られる情報を活用することで、より正確な判断が可能になります。
これら3つの要素を組み合わせることで、現在の立ち位置や競合の動きを的確に把握し、最適なアクションを選択することが大切です。
Q.
候補者は「第一志望です」と発言しているものの、自社からはまだ内定を出していない状況です。一方、ライバル企業は今月中に内定を出す予定であり、エージェントからは「自社とライバル企業の志望度は五分五分で、どちらを優先するかは不明」との情報が入っています。
この場合、自社もライバル企業と同じタイミングで内定を出すべきでしょうか? それとも別の戦略をとるべきでしょうか?
A. 内定を急ぐ必要はない
候補者が、第一志望と言いながらエージェントには五分五分と伝えていることから、即座に他社の内定を受諾する可能性は低いと考えられます。そのため、まずは 「候補者が競合他社に対してどのような感情を抱いているのか」、「競合他社からどのように魅力付けされ、どの点に懸念を感じているのか」 などの情報をエージェントを通じて正確に把握することが重要です。
その上で、競合他社が強みとしているポイントに対しては自社も同様の魅力を訴求し、一方で自社が優位に立っている部分についてはさらに強調して差別化を図ることが大切です。最終的には、候補者にとって最も魅力的な選択肢となるよう戦略を立て、適切なタイミングで内定を出すことが効果的だと言えます。
Q.
ケーススタディ1と同様に、候補者は自社に対して「第一志望です」と発言しており、競合企業も今月中に内定を出す見込みです。しかし、エージェントからの情報では「候補者にとって自社は第二志望」と伝えられています。この場合、どのように対応すべきでしょうか?
A. 内定のタイミングを競合企業と揃えるべき
この状況では、候補者の本音として 「内定を確保したい」という思いが最優先である可能性が高いと考えられます。そのため、自社を第一志望と言っているのは、内定を得るためのリップサービスである可能性が高いでしょう。
よって、エージェントの情報を正確なものと判断し、競合企業と同じタイミングで内定を出すことが重要です。これにより、少なくともライバル企業に先行して決められてしまうリスクを防ぐことができます。
自社が確実に逃げ切りたい場合、最もシンプルな条件は以下の2つです。
①候補者本人が内定承諾の意思を示しており、エージェントからも第一志望であると確認できていること
②競合企業の選考や内定出しの動きが遅いこと
このような状況であれば、スムーズに内定承諾へと進められる可能性が高くなります。
大学3年生の就活生が、12月時点で「どうしても大手企業も受けたい」と考え、今後6ヶ月間は就職活動を継続すると宣言するケースは珍しくありません。
しかし、その一方で 「ベンチャー企業の中では御社が第一志望です」 と発言している場合、企業としては 段階的なアプローチを取りながら、内定承諾へと導く戦略を講じることが重要です。
① 内定承諾を先に得る
このような場合、候補者には 「大手企業への挑戦は自由だが、当社の内定承諾期間は1ヶ月間である」 などの条件を提示し、まずは内定を承諾させます。その際、現在の就活市場では内定承諾後も選考を続けることは珍しくないため、企業側としてもこれを織り込み済みで対応することが重要です。
②競争相手を減らす
内定承諾を得た後は、候補者に対してベンチャー企業の中では自社のみを残し、大手企業の中で特に行きたい2〜3社に絞るように促すことが有効です。
③最終的な選択肢を2択に絞る
候補者が大手企業の選考を受ける中で、不合格となる可能性もあります。一方で、最終的に大手企業から内定を獲得した場合でも、選択肢が 「大手企業 vs. ベンチャー企業の自社」 という2択になれば、戦いやすくなります。
現在の採用市場では、内定承諾後のフォローが不可欠な要素となっています。
【最も有効なフォロー施策】
内定者フォローの中で 最も効果的なのは、「実際に働いてもらうこと」 です。
内定者インターンを実施し、実際の業務を経験させることで、会社への理解を深め、当事者意識を高めることができます。もしインターンの実施が難しい場合は、「採用プロジェクトへの参加」 が有効です。
採用プロジェクトへ参加させる場合、以下のような視点で関与させると効果的です。
・自分はどのような就活をしてきたのか?
・自社に対してどのような感情を持っていたのか?
・自分はなぜ採用されたのか?
・どんなことを期待されているのか?
・採用基準はどのようなものだったのか?
これらを通じて、内定者自身の就活体験を振り返らせることで、「自分がなぜ採用されたのか」 に対する納得感が生まれます。そのため、面談などを活用し、自身の思考や体験を語らせることで「自分事化」してもらうことが大切です。
また、同期の採用活動に関わらせることも、より強い当事者意識を醸成するための効果的な施策となります。
加えて、これから就職活動を進める学生がどのようなカスタマージャーニーを描いていくのかを一緒に分析し、それに対してどのような施策を打つべきかを内定者とともに考えるというアプローチも有効です。内定者自身が就活生の目線を持っているからこそ、リアルな視点での意見を取り入れやすく、採用活動の解像度を高めることができます。
【避けるべきフォロー施策】
「月に1回の面談」や「課題を与えて考えさせる」 などの手法は、他に選択肢がない場合の補助的な対応に過ぎません。フォロー施策の本質は、自社に対する当事者意識を芽生えさせることにあるため、受け身の関わり方ではなく、積極的に実務に関与できる機会を提供することが望ましいです。
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