ベンチャー企業の中途採用は「アトラクト」を極めることで成功する【後編】
中途採用に行き詰まるベンチャー企業は非常に多く、私たちのもとには多くのご相談が寄せられています。中途採用がうまくいかない原因はさまざまですが、「アトラクト」に問題を抱えている企業が多いと感じています。そこで今回お伝えする […]
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中途採用に行き詰まるベンチャー企業は非常に多く、私たちのもとには多くのご相談が寄せられています。中途採用がうまくいかない原因はさまざまですが、「アトラクト」に問題を抱えている企業が多いと感じています。そこで今回お伝えするのは、中途採用におけるアトラクトの重要性と進め方です。前編ではベンチャー企業の中途採用においてアトラクトが重要な理由と、アトラクトを成功させる9つのステップをお届けします。
私は中途採用においては「アトラクト」が重要であると考えています。アトラクトなくして、ベンチャー企業の中途採用は成功しません。まずはアトラクトの定義と、アトラクトを重視する理由をお話しします。
私の定義するアトラクトとは、採用候補者が求めるものと自社がもつ特徴や魅力をすり合わせていくことです。アトラクトのゴールは、採用候補者に「この会社に入社したい」と思ってもらうこと。そこに辿り着くまでに、幾多のステップを辿ります。
自社の存在を認知するためにWeb上で繰り広げる「空中戦」の時点でアトラクトは始まっています。採用活動における空中戦とは、採用サイトやコーポレートサイト、Wantedlyなどで「当社はエンジニアを募集していますよ」などと発信することです。空中戦で自社の魅力を希望する人材に届けることができなければ、「エントリーが1件もこない」という状態に陥ってしまいます。
空中戦に続いて行われるのが地上戦です。一次面接、二次面接、三次面接、コア面接と複数回の面接を設定している企業が多いでしょう。地上戦におけるアトラクト成功の鍵を握っているのは、面接官のマインドと連携です。
面接といえばジャッジメント、つまり企業側が採用候補者を見定めるムーブメントをとりがちですが、本来は自社の魅力を伝える非常に重要な場。面接官から面接官へと候補者ごとの「刺さった内容」をバトンリレーのように引き継いで、自社の魅力を候補者にパーソナライズした形で伝える必要があります。
これらのプロセス全体が「アトラクト」です。空中戦と地上戦のいずれも制さなければ、アトラクトは成功しません。
採用活動は「アトラクト」と「ジャッジメント」に分類されます。多くの採用担当者は採用活動=ジャッジメントと考えがちですが、実はアトラクトとジャッジメントを繰り返しているのが採用活動です。ジャッジメントを行うためには、採用候補者からの応募が必須。だからこそ私はアトラクトを最重要視しています。
特に知名度やブランドでは大企業に太刀打ちできないベンチャー企業や中小企業には、アトラクトが必要不可欠です。例えばGoogleはアトラクトに気を配る必要はないかもしれません。コーポレートサイトに応募フォームを設置すれば、世界中からエントリーされるでしょう。ですが小規模な企業がこのような採用活動を実践しても、優秀な人材のエントリーは期待できない。アトラクトで自社の魅力を採用候補者やその予備軍に伝える必要があるのです。
人材業界は圧倒的な売り手市場といわれています。特に人材不足が叫ばれているIT・通信業界における2021年4月現在の新規求人倍率は6.28倍です。東京都内に限ると更にこの数字は厳しくなります。これはITエンジニアに限った傾向ではありません。
ベンチャー企業や中小企業においては、会社の成長には優秀な人材が必要不可欠です。アトラクトが欠如している状態で採用活動を進めると、「人が足りないこと」が原因で事業の成長が停滞しかねません。帝国データバンクの調査では「情報サービス業」や「飲食業」「建設業」において人手不足が顕著であり、60%以上の企業が従業員不足であると認識しているとのこと。人手不足を理由に大型プロジェクトの受託を断ったり、売上が低迷したりといった状況は珍しくありません。
参照元:パーソルキャリア株式会社「デューダ 転職求人倍率レポート」https://doda.jp/guide/kyujin_bairitsu/data/
参照元:(株)帝国データバンク「人手不足に関する企業の動向調査(2022年1月)」https://www.tdb.co.jp/report/watching/press/pdf/p220212.pdf
ここからは具体的な方法をお話しします。
①経営ー人事ー事業部の一枚岩化
アトラクトの事前準備として、欠かせないのが経営と人事、事業部を一枚岩化することです。採用計画・採用要件・採用予算のコンセンサスを取っておく必要があります。
②ペルソナをシャープにする
社内でコンセンサスが取れた採用要件から、求める人材像=ペルソナをシャープにしていきます。「こういう人が来て欲しい」という人材像を具体的に掘り下げるのです。年齢や現在の年収、出身企業やこれまでの職歴・経験業務といった属性だけでなく、スキルや価値観、転職の理由なども明確にしておきます。
③ペルソナの深層心理を想像して、刺さるメッセージを考える
空中戦と地上戦の準備として、ペルソナの深層心理を想像して彼らに刺さるメッセージを考えます。これらのメッセージを発信する場所は以下の通りです。
1.自社サイトの「採用情報」ページ
2.DRサービスの求人票やスカウト文面
3.面接中のコミュニケーション
④自己開示から始める
面接では、終始採用候補者のジャッジをするのではなく、自己開示からスタートしてみてください。自己開示といっても、難しく考える必要はありません。「最近娘が生まれたんですよ」「Netflixにはまっていまして」といった話題でOKです。ここで信頼関係を構築しておくことで、後の工程がスムーズに進みます。
⑤採用候補者の過去ー現在ー未来を傾聴して理解する
採用候補者のこれまでの経歴や、現在置かれている状況、そして目指しているものや成し遂げたいことなどを「傾聴」に徹してヒアリングし、理解します。
⑥5W1Hの頭の納得を「目の前の候補者に刺さる言い方で」形成
面接の際に採用候補者に対して、具体的な業務内容や時期などを伝えます。
「入社していただいた場合、まずは社内の経理業務に取り組んでいただき、慣れたら半年後に決算チームに移動していただきます。チーム内ではペアを組んで(以下略)」といった具合に、採用候補者が仕事内容を理解して、働いている姿を想像できるように説明するのです。
⑦VISIONに対する心の納得(ワクワク感)を「目の前の候補者に刺さる言い方で」形成
頭の納得に続いて次に必要なのはワクワク感、つまり心の納得です。ステップ6で「理想的な働き方ができそうだ」「自分の能力を存分に活かせそうだ」と頭で納得できていても、ここに「ワクワク」がなければ、採用候補者は転職しません。
ワクワクを生み出すには、会社と採用候補者のビジョンが一致する必要があります。採用候補者が描く将来像と会社のミライの方向性が重なったとき、採用候補者はワクワクしてくれます。転職活動においては、過去の経験への共感よりも未来が大切です。
面接を終えたあと、採用候補者が家族や友達に「良い転職先見つかった?」と聞かれたときに、「それがさ、その会社って凄いビジョンを掲げてて成長速度もすごそうで……」と語るレベルまでワクワクしてもらえればステップ7は大成功といえます。
⑧⑤でヒアリングした未来軸を中心に、最終面接〜オファー面談でプロミスする
最終面接=オファー面談です。ステップ⑦を担当した面接官から最終面接の面接官に、採用候補者の抱く未来軸を必ず引き継いでおきます。
その上で、「前回の担当面接官から○○さんのことを聞きました。○○さんのような方がジョインしてくれたら当社の成長は更に加速します。入社していただいたら○○さんのやりたいことを応援しますし、○○さんの目指すキャリアを構築できる業務をお願いすることをコミットします。だから私たちと一緒に夢を叶えませんか」という風にお話をしましょう。
⑨条件面や働き方の握りを真摯に向き合って形成する
ステップ8で採用候補者が内定を承諾したら、面接官は人事担当者とバトンタッチします。去り際に「では○月○日に会いましょう」と伝えることを忘れずに。
人事担当者は内定通知書を読み合わせます。このときに、人事担当者が代表の気持ちを再度伝えた上で、「○○さんの気持ちはいかがですか」と再度確認しておきます。
今回はベンチャー企業の中途採用におけるアトラクトの重要性と、成功させるための9つのステップをご紹介しました。ぜひ本記事を参考に、アトラクトの成功に向けて取り組んでみてください。次回はアトラクトの失敗事例と解決策、STARMINEが提供するサービスについてお届けします。